2024年10月14日月曜日

ロンドン・パリ旅行2024②「離日~ロンドン」

 出発は関西国際空港


10月3日夕方6時半関西空港発のカタール航空で出発、ドーハ・ハマド国際空港でトランジット、ロンドン・ヒースロー空港には翌日4日の現地時間午前6時25分到着予定です。

実は夫は出発当日午前まで仕事をしなければならないかも…だったのですが、結果としてちゃんと休みがとれてよかったです。

写真は関空で撮影。雨☔だったせいもあり、もう夜みたいですね💦今回の旅行は日程の半分は雨。とくにパリは連日雨☔でした…😞

さて、事前に調べたところ、フライトは乗ってから1時間くらいで最初の機内食が出るとのことだったので、昼食後はなにも食べないよう、空腹で搭乗。


機内食はメインディッシュ(肉または魚。写真のものはマッシュポテトに隠れてますが、中にはチキンが入ってます)とサラダ(謎な味付けのものがしばしば出る)、パン、デザート、飲み物と小さなボトルに入った水というラインナップ。メインの味付けはやや濃い目ですがおいしかったです。謎なサラダはおいしいときもあれば、ん?と思うときもありで、自分の口にはちょっとな、というときは無理せず残しました。機内で体調を崩すほうが周囲に迷惑がかかると思ったので。パンとデザートは普通においしかったです。

食後はコーヒーなどホットドリンクとビスケットが配られ、その後消灯(日本時間で夜9時すぎくらい)。各座席には液晶モニターが付いていて、フライトプラン(目的地までの残り時間や今どの辺を飛んでいるのかなど)を確認できたり、映画を見たりゲームで遊べたりするので、まだまだ起きている人は多そうでした。私は持ってきたタブレットで小説を読んだりしつつ、就寝モード。

座席には枕代わりのクッションと毛布、モニター用のヘッドフォンが備え付けてあります。ほかに、これは関空~ドーハ間だけ、アメニティとして耳栓、アイマスク、靴下のセットがもらえました(帰路ももらえた)。9時間以上の長丁場だからかな?

ヘッドレストの位置がどうも私には合わなくて寝づらかったのですが、どうにかこうにかちょっと眠ったと思ったら機内が明るくなり、2度目の機内食。食べましたよ…謎のサラダは残しましたけどね😅


人生初トランジット



現地時間の夜11時20分、ドーハ・ハマド国際空港到着。タラップで駐機場に直接降りて、次の飛行機へ移動です。


ハマド空港名物?「ランプベア」というアート作品だそうです。

次の飛行機が出発するまで1時間50分あると旅程表にはあったので、立ち寄ったついでにお土産でも冷やかそうかと思ったのですが、空港の中がすごく広くて、トイレに寄ったりしているうちにそれどころではなくなりました💦

そして午前零時なのに空港のスタッフさんたちのあいさつは「Good morning!」。業界っぽい😂

トランジット後は6時間半くらいでロンドンまでの予定ですが、またもや出る機内食

サンドイッチとジュースという軽いものですが、すでに2食食べたあと、座ってただけなのでお腹が減っているわけがない!でも夫が「食べる」というので、私の分もあげました😂

その後、ロンドンが近づいてきた頃にまた機内食😅さすがにこれで最後です(もう何を食べたか覚えてないし、写真も撮ってないw)。

ヨーロッパまで約20時間のフライト中、機内食はだいたい4回出ると聞いてはいましたが、ホントでしたね…

そんなわけでロンドン到着です🛩️

続きます~ヽ(=´▽`=)ノ

①にもどる

ロンドン・パリ旅行2024①「離日準備」

はじめに 

子どもが今年2024年4月からイギリスへ留学するのをきっかけに、パスポートを取りました。

「留学先で何かあった時、すぐ駆けつけられるように」

と思って取っただけで、まさか自分が渡航するなんて思ってませんでした。

ま、行けたらいいなぁと思わなくはなかったのですけどね。なにしろ、イギリスには憧れの大英博物館があるし!🏛️

とはいえ、費用とか、夫の休みがそんなに取れるのかとか、フライトに20時間くらいかかるとか(トランジットした場合。直行便ならもっと速いようです)、ウン十年ぶりの海外なので旅先の情報をイチから調べるのが大変そうだとか、ちょっと考えただけで「うへえ…」でした😓

ところが、夫がH◯Sで7泊8日ロンドン・パリのパックツアーを見つけてから、事態が急転。

ホテルもフライトも選べないけど、二人で60万を割り込む格安ツアー。これは魅力的すぎる💕

それに、いつかいつかと言いながら年を取って、気がついたら「もう海外なんか無理…」という年齢になってしまわないとも限りません。

不安材料は尽きないものの、ジャングルの奥地に行くわけじゃなし、多少の不足は現地でなんとか補えるだろうし、何よりいまはネットがある!📲というわけで、「じゃあ行ってみますか…」となったわけでございます😂


準備について

フライトの便名や時間、ホテルなどなどが決まったのは、出発のひと月くらい前。H◯Sから電話があり、その後、出発の1週間くらい前に旅程表や申込みの控え、ロンドン~パリ間を移動するとき使うユーロスターのチケット(コードが印刷されたコピー紙)などなどが送られてきました。

旅は準備が9割と申します。

旅行会社の旅程表はフライトの時刻やホテル名など必要最低限の情報だけなので、私はその旅程表の情報に加えて、空港から最寄り駅までと、そこからホテルまでの道順、現地での予定などなども網羅した「旅のしおり」的なものを自分で作成😆

文書のフォーマットはMSワードのテンプレを使いました。↓これ、シンプルで使い勝手がよかったです。


現地の公共交通機関については頭が痛くなるまで調べまくりました。とくにパリ!私達が行くのはオリンピックが終わってお祭り騒ぎも落ち着いた頃ですが、「治安がよくない」という噂のRER B線は使わないという方針で行くことに。

まあ、その方針は結局いろいろあって反古になってしまったのですが…詳しくは後述します😅

荷造りにも頭を悩ませましたね~。7泊8日の日程ですが、最初の1泊と最後の1泊は機内泊なので着替えなどはしません。ということは…7泊中着替えるのは実質5泊。着替えは何セットあればいいのか、現地での洗濯はどうするか…😟人の数だけ答えがありそうですよね💦

家にあるスーツケースはディズニー旅行でいつも使っているもの。2泊3日なら十分ですが、1週間以上の旅行となると、夫一人の荷物だけでもう満杯。

でも今回のためだけに新しい大型スーツケースを買うのはあまりにコスパが悪いよね~ということで、押し入れの天袋に長年眠っていた小型スーツケースを引っ張り出しました。

子どもが小さかった頃、ちょっとしたお泊まりなどに使っていたやつ。まさか十数年ぶりに日の目を見ることがあろうとは😂機内持ち込みサイズだし、ロックは付いてないけどファスナー部分に錠前を通す穴があるので、ここにナンバーロックを買ってつければOK。

ただ、小型なので圧縮したとしても着替え2セットとパジャマが限界でしたね。余裕があれば着替えはもう1セットあってもよかったかも?🤔と、現地に着いてから思いました。

現地での洗濯は、近くにコインランドリーがあるならそちらへ、ホテルのランドリーサービスも値段に寄っては選択肢に入れるという場当たり式😂で行きましたが、結果としてロンドン、パリ、いずれのホテルも近隣にコインランドリーがあり、助かりました。

ただし、下着みたいなちょっとした洗濯ならホテルのバスルームでもできるように、3COINSのトラベルグッズコーナーで洗濯バッグを購入。自宅でいつも使っている液体洗剤も詰め替えパウチに入れて持っていきました。これはとっても役に立ちました!😄

ホテルのランクにも寄るかもですが、私が泊まったホテルはいずれもティッシュペーパーというものが部屋になかったので、ポケットティッシュは多めに持って行くのがいいと思います。ウェットティッシュも持って行ってよかった。

逆に、買わなくてよかった~とか、持って行かなくてよかった~と思った物は、変圧器とドライヤー。

変圧器は、重いしでかいし高価いしで購入に二の足を踏んでいたら、「スマホの充電くらいなら変圧器なしで大丈夫」みたいなことが家電量販店の売り場に書いてあったので、それを信じて購入をやめました😂もちろん、パソコンなどもっと繊細な電子機器を持っていく人は必要かと思いますよ。でも、私は結果としてなくても大丈夫でした😊

ドライヤーも、ホテルの部屋に普通に備え付けがあってよかったです。日本のものみたいにイオンで髪がツヤサラになるような機能はなかったけど…😂


予約したもの

今回の旅行のために自分で予約したのは、海外用モバイルWiFiと、大英博物館入場券と、ディズニーランド・パリ(DLP)のチケットです。

欧米の公共施設にはどこも無料のWiFiがある、と聞いていましたが、混雑していたら使い物にならないおそれもあるし、何よりセキュリティが心配なので、海外用モバイルWiFiをレンタル予約して持っていきました。

現地でプリペイドSIMを買うことも考えましたが、物理カードを入れ替えるのってめんどくさそうじゃない…?😒

モバイルWiFiは荷物になるとか充電がすぐ切れるとかいう話も見かけましたが、空港で受け取って空港で返却OKだし、変換プラグやモバイルバッテリーも一緒に貸してくれるし、複数人で使うならコスパはこっちのほうがいいのでは、ということで採用。

一番安い4G回線で1日1ギガのプランにしましたが、結果としてこれで十分だったし、大変重宝しました😄

大英博物館の入場券は、念の為取ったけど、結果としては必要なかったかも…😅私が行ったのが平日だったからか、さほど並ばなかったし。まあこれについても後ほど詳述いたします。

DLPのチケットはKLOO◯というアプリで予約しました。Google検索したら最安値!ってガン推しされたので😂DLPはランドとスタジオの2パークあるので、両パーク行き来できるチケットを2日、2人分で5万円ちょいというお値段。日本でランド・シー両パークのチケットを2日分予約するよりは安いかな、と思いました🤔


そんなこんなしているうちに、あれよあれよと出発日。

続きます~ヽ(=´▽`=)ノ

2024年9月22日日曜日

紅蓮の禁呪150話「竜と龍・七」


 「わたしがお前の力を増幅させる」


 黄根は宣言した。


「この娘の――紅子の命を、取り戻すんだ」


 彼と、紅子を抱えてうずくまる竜介を囲み、金色の法円が黒大理石の上で回転している。

 虫の羽音のようなかすかなハミング音に合わせて、その幾何学模様を複雑に変化させながら。

 竜介は視線を上げて黄根の顔を見た。

 正面にひざまずいている黄根と、間近に目が合う。

 こんなに近くで、この老人の顔をかつて見たことはなかった。

 金色の光輝に包まれているそれは、彼がよく知っているとおりに、威圧的で険しく厳しい。


 しかし――


 今はそれが、不思議なほど、この上なく頼もしく思えた。

 老人の口調が、自信に満ちているからだろうか?

 できるかもしれない。

 そんな気持ちが、ふつふつと湧き上がる。


 たとえ自分の命に替えても、彼女を取り戻す。


 竜介は答えた。


「わかりました。やります」



 ――寒い。


 闇の中に、彼女はいた。

 時の流れさえ凍てつく寒さと、永遠の闇。

 その中で、固く目を閉じ、膝を抱え、小さく小さく丸まっている。


 寒さをしのぐため――だけではない。


 彼女は何かをその胸に抱え込んでいた。

 その「何か」を守るために、ひたすら丸くなっている。


 それは、小さな炎だった。


 胸の奥の、小さな熱と光。


 いつからこうしているのかも、もうわからない。

 自分が何かを待っていたような気がするけれど、いったい何を待っていたのかすら思い出せない。

 それでも、この炎だけは、これだけは守らねばならない。

 これだけは、消してはならない。

 たとえその理由さえもはや思い出せなくても。


 そんな彼女に、闇がささやく。

 無駄だ、と。


 無駄なことだ。

 お前が忘れてしまったように、お前が待つものも、お前を忘れてしまった。

 もうすべてを手放してしまえ。

 楽になれ。


 闇にとって、彼女の炎は目障りなのだ。

 この炎のせいで、彼女を凍えさせ、完全に取り込むことができないのだから。

 彼女は闇の邪悪さを本能的に感じ取っている。

 だから、守りをさらに固くする。


 けれど――


 炎は少しずつ、その勢いを失いつつあった。

 それは今や小さな灯火(ともしび)となり、吐息のささやかな一吹きで消えてしまいそうだ。

 同時に、押し寄せる絶望が、心を蝕んでいく。


 なんだか、疲れたな……。

 手放してしまおうか……。


 そんな彼女の気持ちを鋭く感じ取り、闇が邪悪な歓喜に震える。

 それさえ、彼女はもうどうでもいいと感じ始めていた、そのとき。


 何かが――「だれか」が、彼女を呼んだ。


 聞いたことのある声だった。

 ずっと待ち望んでいた声だった。


「紅子」

 それはたしかにそう言った。


 炎がにわかに勢いを取り戻し、その熱と光が彼女の心をほどいていく。

 膝を抱えていた腕を解き、ゆっくりと起き上がる。


 闇が怯む。


 固く閉じていた彼女の双眸は今、開かれ、赤く燃えている。

 戻りたい。

 戻らなければ。


 周囲は上下すらわからない無限の闇だ。

 だが、彼女はふらつきながらも立ち上がった。

 闇はそんな彼女を威嚇するかのように、恐ろしい咆哮を響かせる。

 凍てつく吐息とともに針のような氷のつぶてが、彼女に襲いかかる。


 しかし、その攻撃はどれも彼女を傷つけることはできなかった。


 次の瞬間、彼女の足元から、オレンジ色の花びらのような炎が勢いよく燃え上がり、彼女の全身を繭のように包んだからだ。


 炎は灼熱の盾となって、闇が繰り出すあらゆる残忍な殺意の具象を防ぎ、さらには金色の火の粉を吐きながら、その赤い牙と舌で、見る間に闇を切り裂き駆逐していった。


 たった四つの御珠だけで強行された禁術で力尽きたはずの彼女の、どこにそんな力が残っていたのだろう?


 否、これは彼女「だけ」の力ではなかった。

 彼女に「戻ってこい」と呼びかける、その声の力。

 彼女を待つ人達の、心の声の力だった。


 そして――


 そして、彼女は戻ってきた。


 現実に戻ってきた彼女が最初に感じたこと、それは口の中の金気臭い血の味と、寒さと、そして強く抱きしめられている温もりだった。


 知っている匂いだった。


 目を開くと、懐かしい青い光の向こうに、確かに彼がいた。

 心配そうにこちらを覗き込んでいる。


「竜……介」


 血が乾いて動かしにくい口で、そう呼んでみる。

 涙があふれた。


「紅子……!紅子ちゃん!」


 闇の中で聞いた声。

 それが潤んで聞こえたのは、気のせいではないようだ。

 竜介の頬にも、涙の筋が光っている。


「これ……夢じゃない、よね?」


 紅子がかすれた声で尋ねると、竜介は泣き笑いの顔になって、強く頭を振った。

「夢なもんか!君は、戻ってきたんだ」

 そうして、彼は紅子を抱きしめると、その耳元で言った。


「君は、帰ってきた……もう、どこへも行かないでくれ」



※挿絵はAI生成です。

2024年9月11日水曜日

紅蓮の禁呪149話「竜と龍・六」


 龍垓は、己の腹心の首がその胴を離れても、目もくれなかった。

 その代わりというように、竜介と黄根の間合いにより一層深く踏み込む。


 そのとき、鷹彦の起こした風撃の余波が彼らを襲った。


 激しい風に思わず目をかばう竜介。

 と、その瞬間、あのぞっとするほど強大な力の気配が消えた。

 慌てて視界を確保すると、すぐそこにあった黒い壁のような鎧がない。


 否。


 それは移動していた。

 十メートルばかり遠くに――つまり、法円の中央に。


 風で剥ぎ取られたフードから現れた、白い顔に、彼の目は釘付けになった。

 血の気はなく、目は落ちくぼんでいるけれど、それはたしかに紅子だ。


 そして、その背後には、龍垓の姿があった。

 小柄な紅子に比べ、その巨躯はまさにそびえるが如くだったが、今、それは更に大きく見えた。


 なぜなら、長剣を振りかざしていたからだ。


 ぎらつく長剣の切っ先が、スローモーションのように、紅子の頭頂へ吸い込まれていく。


 竜介は叫ぼうとした。

 駆け出そうとした。

 これが悪夢なら今すぐ醒めてくれと願った。

 せっかくここまでたどり着いたのに。

 目の前に彼女がいるのに。


 これで、終わりなのか――やはり、遅かったのか。何もかも。


 ところが。


 龍垓の剣が、少女の髪に今にも触れるというとき、突然ぴたりと止まった。


 次の瞬間、龍垓の足元に金色の法円が現れたと思うと、その姿は消え、再び現れたのは、竜介の目の前、元いた場所。

 大剣がいきなり頬をかすめるほどの距離に出現し、竜介は思わず飛び退る。

 が、龍垓は動かない。

 その喉元から偃月刀の切っ先が飛び出していることに竜介が気づくのに、さほど時間はかからなかった。


 龍垓の巨躯が前のめりに崩れ落ち、黒大理石に打ち付けられた鎧が、ガシャーン!と驚くほど大きな音を立てる。

 その後ろから姿を現したのは、黄根だった。

 彼は足元の巨大な黒い金属の塊を見下ろし、独り言のように言った。


「これでしばらくは動けまい」


 黒珠の王は――少し離れた場所で首と胴体がばらばらになって倒れている迦陵もそうだが――彼の言う通り、ぴくりとも動かない。

 驚くべきは、血や体液の類が一切、流れ出ていないことだ。

 彼らが人間どころかこの世界の一般的な「生物」ですらないのだ、と竜介は改めて思う。


「全員、早く舞台に上がれ」


 黄根が呼びかける。

 龍垓も迦陵も、炎珠の神女に焼かれたわけではないから、影にはならない。

 しばらく経てばまた動き出すだろう。


「立てるかね」

 泰蔵は、床に座り込んだままの志乃武に手を貸して立たせてやると、舞台の階段を上がるのを支えた。

 そばには日可理が付き添っているが、彼女では弟の体重を支えきれなかったのだ。

「ありがとうございます」

 二人がユニゾンで礼を言う。

 日可理は弟の切り取られた腕を傷口にぴったり押し当てている。

 力が復活した今、止血はできているようだが、痛みを完璧に消したり、もとに戻すのは、彼らでは無理のようだ。


「坊主、お前はこの舞台の周りに風で壁を作れ。破られるなよ」


 黄根に坊主呼ばわりされた上にそう念押しされて、鷹彦は一瞬ムッとした顔をする。

 が、


「紅子!?」


 玄蔵の悲鳴のような声が、和らぎかけた空気を再び凍りつかせた。

 円形舞台の中央。

 そこでは紅子が、糸の切れた人形のようにくたくたと崩れていくところだった――大量の、血を吐きながら。

 玄蔵が駆け寄り、竜介と鷹彦、それに黄根が続く。


「紅子、紅子……!!」

 娘を抱え起こしながら呼びかける父親の悲痛な声。

 竜介がそばに膝をつくと、玄蔵は今まで見たことのないすがるような目で言った。


「竜介くん、助けてくれ。君なら、できるだろう!?」


 そう言われて、差し出された紅子の身体を受け取る。

 しかし――


 その身体は、凍っているのかと思うほど冷たかった。

 薄く開かれた目に光はなく、紙のように白い顔に、乾き始めた血糊だけが、禍々しく赤い。

 それは、死者の顔だった。


「紅子ちゃん、助かるよな?なあ、竜兄?」

 鷹彦の声が、どこか遠くから聞こえるようだ。


 絶望、という言葉が竜介の脳裏をよぎる。


 ここまで来たのに。

 やっと……やっと会えたのに。

 遅すぎた。全部、何もかも、遅すぎたんだ。


 視界がゆがむ。

 全身の力が抜けていく。


 と、そのとき。

 いきなり視界が明るくなった。

 黒大理石の床に、竜介と紅子を囲む小さな金色の法円が広がっている。

 気のせいだろうか、ほのかに温かい。


「坊主、玄蔵さん、悪いがあんたらはこの法円から出てくれ」


 黄根老人が言った。

 二人が金色の法円の外に出るのを確かめると、竜介に向き直る。


「しっかりしろ、小僧」


 老人はぎょろりと左目で彼をにらみつけ、言った。


「今、このときのことを、わたしは何度も何度も見てきた。そしてこのときのために、ここまで来たのだ」


 まだ間に合う。


 黄根老人は、たしかにそう言った。



※挿絵はAIによって作成しました。

2024年8月30日金曜日

紅蓮の禁呪148話「竜と龍・五」

 


 日可理の足元には、服の袖ごと切り落とされた弟の前腕があった。

 切断部からこぼれた血が、黒大理石に赤いしみを作っている。

 その向こうには、うずくまる弟の背中。

 そして、彼の前に仁王立ちする、その力に比して驚くほど小さな、黒い死神の姿。

 その鎌から滴り落ちる、血――


 視界に映るすべてが、歪んで見える中、彼女はとっさに腕を拾い上げると、弟のそばに駆け寄ろうとした。


 嗚咽が止まらない。

 涙で濡れた頬が凍えるようだ。

 冷たく乾いた空気が、喘ぐ喉に刺さる。

 けれど、彼女は恐ろしさですくむ足を、必死で前に出した。

 気に入っていた白いファーのついたダウンコートが、見る間に血で汚れていく。

 血のついた手で涙を拭ったせいで、顔も赤黒く汚れてしまった。


 もう、異能は使えない。

 切断された腕など運んでも役に立つとは思えない。

 ただひたすら、無意識の行動だった。


 迦陵がその手の鎌をひと振りすれば、二人とも命はない。

 それでも、だからこそ、どうせすべてが終わるなら、志乃武のそばにいたい。


 と、そのとき。


 不意に軽くなった術圧が、彼女の足を止めた。


 その瞬間、その場にいた全員が、法円の中に視線を走らせ、異変を目の当たりにしていた。


 本来、黄珠が載るべき饕餮紋の柱――その柱の前にいた伺候者が、突然、文字通り崩れ落ちたのだ。

 その肉体を構成していた細胞一つ一つが、なんの前触れもなく黒い砂と化した。

 砂は見る間に人の形を失い、ざあっと音を立てて黒大理石の床に広がると、中身を失った黒衣が、その砂山の上にかぶさった。


 迦陵が小さく舌打ちするのを、日可理は聞いた。


「術圧に負けたか……」


 かすれた声で、黒珠の王がそうつぶやくのを、すぐそばで竜介が耳にした、次の瞬間。


 詠唱が途切れ――

 術圧が、完全に消えた。


 それは天与の静寂だった。


 そのとき、世界に、光が戻った。

 日可理は、力が戻るのを感じた。

 目の前では、志乃武の身体を再び白い輝きが包むのが見える。


 これで、志乃武を助けることができるかもしれない――


 だが、その安堵は次の瞬間、絶望に塗りつぶされた。

 迦陵が右手の鎌を下から大きくすくい上げようとするのが視界に入ったからだ。

 鎌の動線の先には、志乃武の首がある。


 間に合わない――


「志乃武さん!!」


 声を振り絞り日可理はそう叫ぶと、無我夢中で弟に背後から覆いかぶさった。

 もしかすると、迦陵の刃なら、二人とも一刀両断されるかもしれない。

 それでも、そうせずにいられなかった。


 ところが。


 強く目を閉じ、その瞬間を待つ彼女に、志乃武が言った。


「日可理、目を開けて」


 彼に促されて目を開けたとき、最初に目に入ったのは、迦陵の巨大な鎌の切っ先。

 それと、もう一つ、見覚えのある両刃の剣。


 剣に沿って視線を上げると、その先には、彼女が作って泰蔵に託した式鬼のうち一体、氷華がいた。

 左手に目を転じると、そこには雪華。


 彼らの剣が、迦陵の刃を止めていた。


 以前にも書いたが、あるじの持つ能力を式鬼は受け継ぐ。

 つまり、雪華・氷華は今、泰蔵と同じく、一秒を五倍にした速さで動ける。

 迦陵の動きを封じるなど、今の彼らには児戯に等しい。


 迦陵が体勢を整えようと刃を引きかけた、そのとき、その背後に影がさした――そう日可理には見えた。


 次の瞬間、影は泰蔵の姿に戻ると、


「悪く思うなよ」


 迦陵にむかってそう言うなり、手にした偃月刀を一閃した。


 ごとん。


 重い音とともに、迦陵の首が、黒大理石の床に転がる。

 その音は、まるで形勢逆転の合図のようだった。


「よっしゃあ、遊びの時間は終わりだぜ!!」


 鷹彦の吠えるような叫びとともに、凄まじいつむじ風が巻き起こる。

 それは彼と玄蔵の手を煩わせていた「雑色」二体の呪符を斬り捨て、法円内部に残る三体の伺候者たちを黒砂に変え、そして――

 そして、法円中央に立つ小さな黒衣のフードを、剥ぎ取った。


 フードから長い黒髪がこぼれた。

 紅玉を散りばめた髪飾りで古風に結われた髪。

 血の気のない頬の肉は落ち、黒ぐろとした目が大きく、細い顎が鋭角を描いている。


 やつれて面変りしている。が、しかし、それは確かに――


 紅子だった。


※挿絵はAIで作成しました。

2024年8月11日日曜日

紅蓮の禁呪147話「竜と龍・四」

 


 人の声とは思えない音だった。

 息継ぎもなく、一定の抑揚とともに繰り返されるうねり。

 太古の力を孕むその音は、最初の抑揚の区切りが終わるまで一つの音だったのが、新たな音のうねりに入るとき、四つ――おそらく伺候者たち――の音が加わって五重唱となった。


 のしかかるような術圧。


 黒帝宮を包む氷殻を形成する力場が、この恐るべき音を非可聴音に変換し、増幅する。

 文字通り、世界を揺さぶるために。


 同時に、法円の中では、対角線上に立つ四本の列柱のうち、二つの饕餮紋上に、それぞれ見覚えのある白珠と碧珠、そして三つ目に、忌まわしい青白い鬼火をまとった黒い宝珠――黒珠が現れた。


 中央の柱には、真紅の宝珠、炎珠が輝いている。


 禁術を止めねばならない。

 今すぐに。

 彼らの行く手を阻むのは、迦陵とたった二体残った雑色のみ。

 もとより迦陵を引き受けるつもりの泰蔵が、竜介と黄根にそっと視線を送る。


 しかし。


 彼らは動かなかった――否、動けなかった。


 法円の外の壇上。

 何もなかった空間に突然黒い波紋のようなものが現れたかと思うと、それはあっという間に大きくなり、波間の闇から「彼」が姿を現した。

 「雑色」たちと迦陵がその場に膝をつき、頭を垂れる。


 黒い鎧を身に着けた隆々たる体躯に、黒い巻き毛に縁取られた美麗な白い顔。


 龍垓だった。


 巨大な氷殻の内部であるこの黒帝宮は、意外にも頬に当たる空気が地上よりも生温い。

 しかし今、この亡者たちのあるじを中心に、周囲の気温は急激に冷え始めていた。

 それが気のせいではない証拠に、龍垓の足元の黒大理石に、白く霜が降り始めている。

 

 凄まじい冷気と、恐るべき力の気配。


 龍垓と見(まみ)えるのが初めてではない竜介でさえ、慣れることがないこの圧迫感に、残る六人が圧倒されないわけはなかった。

 多少のことでは顔色を変えない黄根さえも、心なしか青ざめた顔で黒珠の王を凝視している。


 龍垓は足下を睥睨すると、口の端を歪めて嗤った。


「我が城へ、よくぞ参った」

 闇の王はそう言って、己が腰に佩(は)いた大剣をすらりと抜き放つ。

「本日よりここが汝らの墓所とならん。名誉と思うがいい」


 その言葉が合図だったかのように、周囲が暗くなった。

 気のせいではない。

 竜介たち七人が放っていた光輝が、一斉に消えたのだ。


 禁術の準備が整い、起動を開始したということだろう。

 異能(ちから)が使えなくなった。


 驚き動揺する竜介に、龍垓の大剣が容赦なく襲いかかる。

 竜介は持っていた偃月刀でかろうじて受けるが、衝撃が重く、思わず後退してしまう。

 鷹彦と玄蔵も、残っていた「雑色」でそれぞれ手一杯だ。


 白鷺家の姉弟は、式鬼や呪符が使えなくなった。

 氷華と雪華もただの紙片に戻り、ひらりと黒大理石の床に落ちる。

 次の瞬間、それらの紙片を蹴散らすようにして、迦陵が泰蔵の間合いに入った。


 速い。


 異能が使えない泰蔵に、迦陵の刃を避ける術はもはやない。


「泰蔵さん!!」

「親父っ!!」

 志乃武と玄蔵の叫び声と、日可理の悲鳴が交錯する。

 が、まさに間一髪。

 死神の大鎌は、またしてもその威力を振るいそびれた。

 今度は黄根が、「雑色」から奪った二本の偃月刀を使い、見事な両刀術で迦陵の刃を止めたのである。


「すまん」


 泰蔵が前方の迦陵に視線を固定したままつぶやくように言うと、黄根も同じく迦陵を見たまま、左手の偃月刀を泰蔵に素早く押し付ける。


「今はいい」


 早口でそう返し、「行くぞ」と一言。

 今度はこちらから、小さな黒衣の間合いに入る。

 禁術のほうに黒珠の力を傾注しているため、迦陵も龍垓も異能を使うことはない。

 純粋に、膂力(りょりょく)のみがものをいう戦いだ。


 そして迦陵は、泰蔵と黄根の二人を相手に、互角以上だった。


 小さな黒衣の振るう二本の鎌が彼ら二人を振り回す様は、まるで台風の目のようだ。

 泰蔵も黄根も、その着衣に、皮膚に、少しずつ刃のあとが増えていくが、それを厭(いと)う様子はない。

 むしろ、怪我を承知で間合いに踏み込んでいるきらいすらある。


 実は、彼らの視界の端には、法円に忍び寄る日可理と志乃武の姿があった。


 法円の周囲に結界の術圧は感じられない。

 伺候者たちも異能を使えないのであれば、彼ら二人でどうにかできる可能性はある。


 泰蔵は日可理たちとは反対側に視線を走らせた。

 龍垓は重い鎧を着けたまま、まるでハンデを楽しむかのように竜介の相手をしている。

 日可理たちがいるのは、法円を挟んでちょうど龍垓の背後だから、気づかれる恐れはまずない。


 迦陵だけをこちらに引き付けておけばいい――


 やたら踏み込んでいく泰蔵の意図を、黄根もまた察していた。


 日可理と志乃武は黒大理石の舞台を回り込み、幅広の階段を上がって、今しも法円の中に立つ一体の伺候者の背後に近づきつつあった。

 だが、目前の伺候者が纏う黒いローブに、志乃武が掴みかかろうとした、その瞬間。


 彼の左手の肘から先が、消えた。


 すべてがスローモーションのようだった。

 志乃武の前には、いつの間にか迦陵がいて、振り上げた片方の刃から、赤い液体が滴り落ちていた。

 生臭い匂いが鼻をつく。


 血だ。


 下から上に跳ね上げるように切り取られた腕は、空中に赤い血の弧を描き、次いで、ボトリ、と重い音を立てて、志乃武のすぐ背後に落ちた。


「何人たりとも、邪魔はさせぬ」

「いやぁぁぁっ!!志乃武さんっ!!」


 迦陵の声。

 日可理の悲鳴。


 そのどちらも、激痛と闘う志乃武の耳には、どこか遠くから聞こえるようだった。

「ぅぐっ……!!」

 絶叫を噛み殺し、彼は残った右手で血が吹き出す左腕を押さえようとしたが、力が入らない。

 目の前が暗くなり、膝から力が抜けていく。

 志乃武は自分の血溜まりの中に崩れ落ちた。


 明るくなったり暗くなったりを繰り返す視界に、自分と迦陵の間に割って入る泰蔵の背中が見えたと思った、そのとき。


 不意に、術圧が軽くなった。


※挿絵はAI画像です。

2024年6月29日土曜日

紅蓮の禁呪146話「竜と龍・三」

 


 いつの間に――!?


 そう思うほど気配をまったく感じさせず、迦陵は竜介たち七人の行く手を阻む形で、法円のある舞台へと続く階段に立っていた。


 濃い瘴気のせいで、黒珠の気配が分かりづらくなっている。


 そんなことを思いながら、竜介は攻撃に備えた。

 七人の発する光が列柱の燐光を圧倒する。

 迦陵の背後で影が深くなった。


 ざわり。


 影はうごめき、次の瞬間、黒い長衣を着てフードをかぶった人の形に分かれたと思うと、彼らに向かってきた。

 その数、十体。

 息遣いも足音もなく、滑るようなその動きは黒衣をまとった幽鬼の群れのようだ。

 さっきの「影」とさほど変わらない、そうたかをくくったらしい鷹彦がつぶやく。


「また『影』か」


 だが、それを聞きとがめた竜介は、


「こいつらは『雑色(ぞうしき)』だ。実体があるぞ」


 早口で警告した。

 その言葉が聞こえたかのように、黒い長衣の下から現れた偃月刀(えんげつとう)が、ぎらりと光る。


「まじかよ!」


 急襲を受けた鷹彦は、急ぎ「かまいたち」で応戦するが、相手は本当に実体があるのかと疑うほど手応えがない。

 切り捨てたはずの黒衣は、すぐに元通りになる。

 それなのに、振り下ろされる偃月刀は確かに実体があり、「かまいたち」で受けると、火花が飛び散った。


 いわば空を舞う刀剣だけを相手にしているようなものだ。


「くそっ、これじゃきりがないぞ!」


 そんな切羽詰まった声が、玄蔵から聞こえた。

 重力を操るほかは体術しか手がない彼は防戦一方で、鷹彦以上に苦戦を強いられていた。

 かろうじて避けた刃の切っ先にコートを切り裂かれ、そこここにほころびができている。


「フードの中の呪符を斬れ!」


 竜介が鷹彦に向かってそう叫ぶのが聞こえたが、雜色の太刀筋は思いのほか鋭く、玄蔵がフードの中に手を伸ばせるような隙はない。


 と、そのとき。


 玄蔵に激しく斬り掛かっていた雑色が、突然、黒い霧が文字通り霧散するように消え、その向こうから黄根が姿を現した。


 彼は別の雑色から奪ったらしい偃月刀を今まさに振り下ろしたところで、その刃で両断されたらしい呪符が、ひらりと玄蔵の目の前をよぎる。

 黄根は持ち主のいなくなった偃月刀を地面に落ちる直前に素早く拾い上げると、刃を下にして、驚き立ちすくむ玄蔵にむかって投げてよこした。


「すみません」


 投げられた偃月刀の柄を危なげなく受け取り、玄蔵が思わずそう言うと、


「謝る必要などない」


 また一体、斬り掛かってきた雑色を切り捨てながら、黄根はそっけなく応じる。

 変わらない仏頂面。

 だが、玄蔵には今、その横顔がこの上なく頼もしかった。

 彼は言った。


「はい。ありがとうございます」



 一方。


「生きていたか」

「ええ。お生憎さま」


 法円が刻まれた舞台の縁に立つ迦陵に、日可理が応じる。

 迦陵が小柄なせいで、彼らの目線はほぼ同じ高さだ。

 雜色たちは皆、竜介たち四人を相手にしており、日可理と志乃武、それに泰蔵の三人の前には、迦陵しかいない。


 しかし、この黒衣の死神は、その気配だけで彼らを圧倒した。

 ただ、日可理だけが、その身の内に燃える激しい怒りで、相手が発する恐るべき冷気を撥ね退けている。

 その表情は、赤ん坊の頃から一緒にいる志乃武でさえ見たことがないような殺気に満ちていた。


「来るだろうと思っていた」

「雪辱を果たしに参りました」


 日可理の言葉に、迦陵はわずかに目を細める。

 それは、嘲笑、とも取れる顔だった。


「……貴様ごときが?」


 その言葉が終わる前に、小さな黒衣が彼らの目の前から消えた。

 語尾の「が?」という音だけが、まるで無人の空間から発せられたように思われた、次の瞬間。


 キンッという硬質な音が一つ――いや、二つが重なって聞こえた。

 それは、死神の鎌が、獲物の命を仕留めた音だったろうか?


 否。


 迦陵の両手の甲からそれぞれ伸びた、三日月型の鎌。

 それらが描く弧の先に、すでに日可理の姿はなく――


 代わってそこにいたのは、泰蔵だった。


 そして、彼の首に今にも吸い込まれようとしていた死神の刃を止めていたのは、朱色の房飾りがついた、二振りの剣。


 その柄の先には、白い水干姿の少女たちがいた。


 黒髪をそろって下げ角髪(みずら)に結い、絵巻物から抜け出たような出で立ちの「彼ら」は、白皙の顔に細い切れ長の一重まぶたという古典雛のような顔も瓜二つで、ただ、それぞれの額にある雪の結晶のような文様と、薄青い氷でできた小さなツノだけが、見分ける目印となっていた。


 そう、「彼ら」は人ではない。

 日可理が泰蔵に託した、雪華と氷華、二体の式鬼だ。


 迦陵は新手の出現に、一旦、手の甲の鎌を消して後ろへ跳び、間合いを取った。

 雪華と氷華も体勢を戻し、上段の構えを取る。

 氷華が左利きなので、彼らの動きはちょうど合わせ鏡のようだ。


「今のうちに、早く!」


 泰蔵は迦陵を見据えたまま、白鷺家の姉弟を鋭く促す。


「はい!」


 二人は法円が怪しい光を放つ舞台へ向かった。

 迦陵は、彼らに一瞥すらくれない。

 それは、氷華・雪華に牽制されているからだと――三人はそう思っていた。


 だが、違った。


「もう、遅い……」


 迦陵の口から、かすかなため息とともにもれた言葉。


 その次の瞬間、地の底から響くような、「詠唱」が聞こえた。

 地鳴りのようだが、それは確かに「声」だった。


 日可理と志乃武は、舞台上に駆け上がることはできなかった。


 禁術が始動し、法円の周囲に発生した力場が、彼らを弾き飛ばしたのだ。



※筆者注:挿絵はAIによって生成しました。

エジプト旅行2026⑥~カイロ歴史地区観光!そして帰国

カイロ歴史地区観光 エジプト滞在最終日 です~! 本日のお土産屋さんタスク😂はカルトゥーシュのお店だったんですが、ガイドさんによると 「オーナーが寝坊したので11時過ぎないと開かない」 というホントかウソかわからない理由で後回しになりました😂 この日の行き先は旧カイロ地区。 ...